相続法の一部が約40年ぶりに改正され、遺産相続や遺言書に関するルールが変更されました。
改正前と後でいったいどのようなちがいがあるのか、不安や疑問に思っている人も多いと思います。
そこで、今回の法改正で遺産相続に関するルールや遺言書の作成方法が今までとどう違うのか、今後はどのような点に気をつけて相続や遺言書の作成を行えばいいのかなどをわかりやすく解説していきます。
遺産相続のルール、改正前と後を比較してみよう
今回の法改正で、遺言書の作成に関するルールや相続に関するルールなどが大きく見直されました。
自筆証書遺言に関するルールが変更に
特に注目すべき点は、自筆証書遺言を作成するときに、財産目録の部分をパソコンで作成してもよくなったことです。
自筆証書遺言とは、文字通り遺言を残す人が自分の字で書いて印を押した遺言書のことです。
自筆遺言書のメリットは、証人や立会人が不要なので、費用がかからずにいつでも残せるということです。しかし、遺言書の全てを自分で書かなければならないため、財産目録の量が多い場合はとても大変な作業になってしまうことがデメリットでした。
今回の法改正によって、今後は自筆証書遺言の財産目録の部分はパソコンでの作成や預貯金通帳のコピーを添付することも可能となります。
遺言書の本体については、手書き必須、さらに手書きではない目録部分の添付書類には、両面ともに署名が必要となりますが、この変更によって、以前と比べ書類の作成がしやすくなりました。
なお、自筆証書遺言に関する改正は、2019年1月13日に施行されています。
法務局で遺言書を保管してくれる
自筆証書遺言は、費用をかけずにいつでも準備できるのがメリットですが、その保管場所に頭を悩ませる人は多いと思います。
家に置いておくと、家族に見られてしまうかもしれませんし、本の間などに隠しておくと、見つけてもらえずに処分されてしまう危険性もあります。
貸金庫や信託銀行、弁護士にお願いするという手もありますが、保管費用がかかってしまいます。
今回の法改正によって、自筆証書遺言の保管を法務局に申請することが可能になりました。
法務局が遺言書を保管することにより、遺言者が生きているうちは、家族であっても遺言書を閲覧することができません。
相続人は、遺言者が亡くなった後であれば、遺言書の閲覧や写しを請求することができます。
(遺言書の保管請求、閲覧申請などの手続きには別途手数料がかかります。)
なお、遺言書の保管制度の開始日は、2020年7月10日となっています。
制度の開始前に遺言書を保管してもらうことはできませんので、ご注意ください。
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配偶者の居住権に関してのルール変更
遺産相続のルールに関しても変更点が多々あります。
その中でも残された家族にとっては、配偶者居住者権はとても重要な権利になると思います。
配偶者居住権とは、今回新たに作られた権利で、被相続人が亡くなる前から一緒に住んでいた場合、配偶者が自宅を相続していなくてもそのまま住み続けてもいい権利です。家に住み続けながら、その他の預貯金などの現金も財産として分配されます。
従来のルールでは、被相続人が亡くなった後も自宅に住み続ける場合は、自宅を相続するのが一般的です。
ですが、自宅を相続する場合、家を財産としてを受けとったことになるので、その分預貯金などの現金として受け取れる財産は少なくなってしまうのです。
例えば、配偶者と子で家(2000万)と預貯金(3000万)を相続する場合です。
例:
配偶者:自宅(2000万)+預貯金(500万)
子:預貯金(2500万)
配偶者はすでに自宅(2000万)を相続しているので、預貯金の現金2500万は子が相続し、配偶者は500万の預貯金を現金として受け取ることになります。
住む場所はありますが、現金として受け取れる金額が少なくなってしまうので、今後の生活がとても心配になってしまいますよね。
今回新設された配偶者居住権は、家を相続していなくてもそのまま家に住むことができる権利なので、これを活用することによって、自宅(2000万)を配偶者と子で1000万ずつ、預貯金も配偶者と子で1500万ずつ相続するといった方法が可能となります。
例:配偶者:配偶者居住権(1000万)+預貯金(1500万)
子:負担付きの家の所有権(1000万)+預貯金(1500万)
相続の金額が同じだとしても、現金として相続できる部分が増えることは、今後生活していくうえでとても大切なことですよね。
配偶者居住権は不動産の登記簿謄本に登記をしないと効力を発揮しません。配偶者居住権の登記は所有者が行うことになりますが、忘れずに行うようにしましょう。
なお、配偶者居住権は、2020年4月1日施行となっています。制度の開始前に配偶者居住権を利用することはできませんので、ご注意ください。
4.遺産の分割前でも預貯金の一部払戻しができるように
故人の銀行口座は死亡がわかると凍結されてしまうため、遺産の分割手続きが終わるまでは預貯金の払戻しができませんでした。
どうしても口座からお金を引き落としたいときは、相続人全員の印鑑をもらうなど、手続きがとても大変でした。
相続人が多いと、遺産分割の手続きは時間がかかることがあります。
そのため、葬儀の費用や生活費など必要なお金を、残された家族が引き落とすことができずに、生活に困窮してしまう事例もありました。
改正後は、金額の上限(金融機関ごとに150万円)はありますが、単独で払戻し手続きを行うことができます。
なお、預貯金の一部払戻しに関する改正は、2019年7月1日に施行されています。
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相続人以外の親族でも、介護に貢献した人は財産を受け取ることができる
改正前は、相続人以外の親族、例えば長男の妻が故人の介護を長年していたとしても、相続人ではないので、財産をもらうことはできませんでした。
つまり、貢献度にはかかわらず法律で定められた相続人で財産が分けられてしまうのです。
改正後は、相続人ではない親族でも無償で介護や日ごろのお世話をしてきた人は、相続人に金銭を要求できるようになりました。
この貢献のことを「特別の寄与」といいます。
今回の法改正によって、相続人でない親族の人の長年の介護の苦労が報われることになりそうです。
なお、特別寄与料の請求は、2019年7月1日以降に開始した相続について行うことができます。
その他の変更点
その他にも、婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置や遺留分制度の見直しなど、さまざまな変更や新制度の導入が行われますが、今回の法改正は、残された家族が安心して生活していけるように配慮された見直しとも言えるでしょう。
なお、それぞれの制度は施行日が異なりますので制度の開始日に注意してください。
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まとめ
今回の法改正によって、自筆証書遺言に対するルールが緩和されたり、残された家族の今後の生活に配慮した変更が多い印象ですよね。
ですが、相続に関する手続きは依然として複雑で、人によって手続きの仕方が異なってきます。
戸籍謄本の取得や不動産名義の変更や預貯金の解約、株式の名義変更などなど、相続手続きをするためには役所や銀行、証券会社など色々な場所に足を運んで手続きを行わなければなりません。
わからないことだらけで、自分で行う自信がないという人は、遺産相続の代行サービスを利用するという手もあります。
遺産相続の手続きについてわからないことや不安なことがあれば、相談できる専門家がいれば安心です。
全国の行政書士・司法書士事務所では、戸籍の代行取得の他、遺産相続にかかわる様々な手続きをサポートしてくれます。
初回の相談は無料なところもありますので、金額や手続きについてわからないことがあれば、問い合わせしてみるだけでも価値はあると思います。
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